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CNC加工におけるチップシンニング:計算式・送り速度・計算ツール

初出公開日 Oct 13, 2026, 更新日 Oct 13, 2026

2 min

目次
  • チップシンニングとは?
  • チップシンニングの仕組み
  • チップシンニング計算式と送り速度計算
  • 実際のチップシンニング加工例
  • チップシンニング計算ツールの活用方法
  • チップシンニングのメリット
  • チップシンニングを使用すべき条件
  • CNC加工におけるチップシンニングの適用方法
  • チップシンニングでよくあるミス
  • チップシンニングと一般的なフライス加工の比較
  • チップシンニングに関するFAQ

ポイントまとめ

  • チップシンニングは、ラジアル切込み量が小さい場合に実際の切りくず厚さを低下させる現象です。
  • 目標とする切削負荷を維持するには、1刃あたり送り量を調整する必要があります。
  • 計算式では、工具径、ステップオーバー、工具の切削接触角度を考慮します。
  • チップシンニング計算ツールを使用することで、送り速度補正を加工前に算出できます。
  • この方法は、フルスロット加工ではなく、部分的な切削幅を使用する加工に適しています。

チップシンニングとは、工具のステップオーバー(横方向切込み)が小さい場合に発生する現象で、設定された1刃あたり送り量よりも実際の切りくず厚さが薄くなることを指します。 この現象を理解することで、プログラマーは適切な送り速度を設定し、目標となる切削負荷を維持できます。

低ラジアル切込みによる薄い切りくずを伴うCNCフライス加工

低ラジアル切込みによる薄い切りくずを伴うCNCフライス加工

チップシンニングとは?

チップシンニングとは、ラジアル方向の切込み量が制限されることで、実際の未変形切りくず厚さがプログラムされた1刃あたり送り量より小さくなる現象です。

工具回転時の切りくず厚さ

各切削刃は円弧状の軌跡を描きながら材料を除去します。 その接触範囲内で切りくず厚さは変化し、ステップオーバーが小さくなるほど最大切りくず厚さも低下します。

実際の切りくず厚さと設定切削条件の違い

設定された1刃あたり送り量は、各切削刃がワークへ進む距離を示します。 しかし、実際の切りくず厚さは除去される材料量によって決まり、ラジアル切込み量が小さい場合、チップシンニングによって薄くなります。

チップシンニングの仕組み

ラジアル切込み量と工具接触角度

ラジアル切込み量は、ステップオーバーと工具径の比率によって決まります。 この比率が小さくなるほど工具とワークの接触角度は狭くなり、各切削刃が材料内に存在する時間も短くなります。

切りくず形成の変化

接触する円弧範囲が短くなるため、切削刃は設定された最大切りくず厚さに到達する前に材料から離れます。

チップシンニングが発生する理由

周方向フライス加工では、切削刃は材料へ進入した直後、切りくず厚さがゼロの状態から切削を開始します。

工具が回転して接触角度内を移動すると、切りくず厚さは最大値まで増加し、その後、切削刃が材料から離れる際に再びゼロへ戻ります。

ラジアル切込み量を小さくすると、工具がワークと接触する角度範囲が狭くなり、切削刃は設定された1刃あたり送り量から期待される厚さに達する前に切削を終了します。

機械送り自体は設定値のままですが、実際に形成される最大未変形切りくず厚さが小さくなるため、送り補正が必要になります。

ラジアルチップシンニングとアキシャルチップシンニングの違い

本記事で扱うチップシンニングは、工具径に対してラジアル切込み量が小さい場合に発生する「ラジアルチップシンニング」を指します。

工具とワークの接触角度が小さくなることで、最大未変形切りくず厚さが設定された1刃あたり送り量より小さくなります。

一方、アキシャルチップシンニングは異なる現象であり、主に大きなリード角を持つハイフィード加工用工具で発生します。

傾斜した切削刃によって切削がより長い刃先部分に分散されるため、1刃あたり送り量が同じでも切りくず厚さが低下します。

どちらの現象も送り補正が必要ですが、発生するメカニズムと計算方法は異なります。

ラジアルチップシンニングとフル幅加工の違い

ラジアルチップシンニングの影響は、ラジアル切込み量が小さくなるほど大きくなります。

一般的には、ラジアル切込み量が工具径の約50%以下になると、送り補正を検討する必要があります。 ただし、適切な補正量は工具形状や加工条件によって異なります。

フル幅スロット加工では工具が約180度の範囲で材料と接触するため、最大切りくず厚さは設定された1刃あたり送り量に近づきます。

チップシンニング計算式と送り速度計算

90度のスクエアエンドミルによる周方向加工では、50%以下のラジアル切込み条件におけるチップシンニングは以下の式で求められます。

hmax = 2fz√[(ae/D)(1 − ae/D)]

0 < ae ≤ D/2

この式は、切削幅が減少すると最大切りくず厚さが低下する関係を示しています。

この関係式は、標準的な90度工具形状におけるラジアルチップシンニング計算に適用されます。 異なる工具形状や加工方法では、別の計算方法が必要になる場合があります。

計算式の各変数について

ここで、hmaxは最大切りくず厚さ、fzは1刃あたり送り量、aeはラジアル切込み量、Dは工具径を表します。

計算時には、すべての長さ単位を統一する必要があります。

送り速度の補正

チップシンニングが発生する場合、必要な1刃あたり送り量およびテーブル送り速度を求めるためにラジアル補正係数Krを使用します。

Kr = 2√[(ae/D)(1 − ae/D)]

fz,adj = ht/Kr

vf = n z fz,adj

ここで、htは目標切りくず厚さ、nは主軸回転数、zは有効刃数、vfはテーブル送り速度を示します。

計算例

工具径D=10mm、ラジアル切込み量ae=1mm、目標切りくず厚さht=0.05mm/刃の場合:

Kr = 2√[(1/10)(1 − 1/10)] = 0.60

fz,adj = 0.05/0.60 = 0.083mm/刃

4枚刃工具を使用し、主軸回転数6,000rpmの場合:

vf = 6,000 × 4 × 0.083 ≈ 2,000mm/min

この補正後の送り速度により、ラジアル切込み10%の条件でも目標切りくず厚さ0.05mmを維持できます。

実際のチップシンニング加工例

加工条件

直径12mm、5枚刃エンドミルを使用し、主軸回転数8,000rpm、ラジアル切込み量0.90mm、目標切りくず厚さ0.040mm/刃で加工します。

ステップオーバーは工具径の7.5%です。

計算手順

ラジアル補正係数は0.527となり、補正前の最大切りくず厚さは0.021mm/刃になります。

そのため、チップシンニング計算では0.076mm/刃の補正後送り量が推奨されます。

Kr = 2√[(0.90/12)(1 − 0.90/12)] = 0.527

hmax = 0.040 × 0.527 = 0.021mm/刃

fz,adj = 0.040/0.527 = 0.076mm/刃

チップシンニング補正前後の送り速度

チップシンニング補正を行う前のテーブル送り速度は1,600mm/minです。

補正後の設定では3,037mm/minまで向上します。 ただし、実際の加工では工具、ホルダー、材料、工作機械の能力を考慮する必要があります。

適切な送り補正値は、ラジアル切込み量だけで決定されるものではありません。 工具形状、ワーク材質、加工戦略、機械性能など、複数の要素が最終的な切削条件に影響します。

JLCCNCでは、加工前の工程設計段階でこれらの要素を確認し、最適な加工方法を検討しています。 CADデータをアップロードすることで、製造レビューおよびCNC加工のお見積もりをご依頼いただけます。

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チップシンニング計算ツールの活用方法

必要な入力条件

チップシンニング計算ツールでは、工具径、ラジアル切込み量、目標切りくず厚さ、主軸回転数、刃数などの情報が必要です。

計算結果の精度を維持するため、入力する単位は統一する必要があります。

手動計算とCAMソフトウェアの違い

手動計算ツールでは、補正後の送り速度を1つ算出します。

一方、CAMソフトウェアでは、登録された工具情報、ステップオーバー、主軸回転数、工具接触状態などを考慮しながら、加工パス全体でチップシンニング補正を適用できます。

計算結果の確認方法

計算結果を使用する前に、以下の項目を確認してください。

  • 入力したステップオーバー値が正しいか確認する
  • RPMと刃数から1刃あたり送り量を再計算する
  • コーナー部や再進入動作による切削負荷増加を確認する
  • 工具および工作機械の許容範囲内で使用する

チップシンニングのメリット

CNCフライス加工におけるチップシンニングのメリット

CNCフライス加工におけるチップシンニングのメリット

推奨切りくず負荷の維持

適切なチップシンニング補正を行うことで、目標となる未変形切りくず厚さを維持できます。

これにより、切削刃は摩擦や押し付けではなく、適切なせん断作用によって材料を除去できます。

安全な送り速度向上

ラジアルチップシンニングを利用すると、切削接触量が減少した場合でも、工具負荷、主軸出力、ホルダー剛性、機械加速度を確認した上で1刃あたり送り量を増加できます。

発熱低減と工具寿命向上

適切な切りくず厚さを維持することで、摩擦による接触を抑制し、切削温度上昇を防止できます。

その結果、工具摩耗を低減し、切削刃の寿命延長につながります。

材料除去率の向上

材料除去率(MRR)は、ラジアル切込み量、軸方向切込み深さ、送り速度によって決まります。

適切に補正されたテーブル送り速度を使用することで、ステップオーバーを増加させることなく加工効率を向上できます。

チップシンニングを使用すべき条件

低ラジアル切込み加工

工具径に対してラジアル切込み量が約50%以下になる低切込み加工では、チップシンニング補正を検討する必要があります。

接触円弧が小さくなることで、各切削刃の切削量が不足する可能性があるためです。

アダプティブ加工・トロコイド加工

アダプティブ加工やトロコイド加工では、工具とワークの接触量を低く一定に維持できます。

そのため、補正された送り速度を使用することで、ポケット加工、広い溝加工、難削材加工などで高い効果を発揮します。

高効率荒加工

同様の考え方は、高効率荒加工にも適用できます。

小さいステップオーバーと大きな軸方向切込み深さ、高い1刃あたり送り量を組み合わせることで、効率的な材料除去が可能になります。

チップシンニングを使用すべきでない条件

フル幅スロット加工、プランジ加工、工具接触状態が制御できない加工では、チップシンニング計算式を適用しないでください。

それぞれの加工方法に適した切削条件を使用し、工具および工作機械の制限値を確認する必要があります。

CNC加工におけるチップシンニングの適用方法

  1. 適切な送り速度を計算する

    まず、目標切りくず厚さ、工具径、ラジアル切込み量を基準として計算を行います。

    補正後の1刃あたり送り量を算出した後、主軸回転数と有効刃数からテーブル送り速度を決定します。

  2. CAM加工パスを設定する

    補正後の切削送り速度をCAMソフトウェアへ入力し、計画したラジアル切込み量に合わせて最適な加工条件を設定します。

    また、コーナー部や再進入動作によって工具接触量が増加する箇所がないか、シミュレーションによって確認します。

  3. 工作機械の能力を確認する

    チップシンニング補正によって送り速度を上げる場合、以下の制限値を確認する必要があります。

    • 各軸の加速度性能
    • CNC制御装置の処理能力
    • 主軸負荷
    • 工具ホルダーの保持力
    • 工具の許容切削条件

    設定した高送り条件が、工作機械および工具システムの能力範囲内であることを確認してください。

  4. 切削工程を検証する

    初回加工では慎重に試し加工を行い、主軸負荷、切りくず排出状態、工具摩耗状態を確認します。

    切削状態が安定していることを確認した後、量産加工条件として承認します。

チップシンニングでよくあるミス

スロット加工でチップシンニング補正を使用する

スロット加工では工具全幅が材料と接触するため、低ラジアル接触によるチップシンニング効果は発生しません。

この条件で送り補正を行うと、切削刃に過大な負荷がかかる可能性があります。

送り速度を過剰に増加させる

チップシンニング計算ツールが示す値は、あくまで幾何学的な補正値です。

工具、ホルダー、主軸出力、工作機械の能力を超えて加工できることを意味するものではありません。

過剰な送り速度は、びびり振動、切削刃損傷、加工面品質低下の原因となります。

工具たわみと工作機械剛性を考慮しない

工具の突き出し量が長い場合、固定剛性が不足している場合、または工作機械の剛性が低い場合、切削抵抗によるたわみが増加します。

その結果、寸法精度の低下や振動発生につながる可能性があります。

異なる材料に同じ加工条件を適用する

アルミニウム、鋼材、ステンレス鋼、耐熱合金など、異なる材料へ同一条件を適用することは適切ではありません。

材料ごとの硬度、切削データ、工具負荷限界を考慮して加工条件を設定する必要があります。

チップシンニングと一般的なフライス加工の比較

チップシンニング加工と一般的なCNCフライス加工の比較

チップシンニング加工と一般的なCNCフライス加工の比較

切削条件の違い

一般的な切削加工では、工具のラジアル切込み量が比較的大きく設定されます。

一方、低ラジアル切込み加工では工具接触角度が小さくなり、チップシンニング効果が発生します。

広い切削幅では工具とワークの接触範囲が大きくなり、各切削刃はより多くの材料を除去します。

送り速度と切りくず厚さ

チップシンニング加工では、目標となる切りくず厚さを維持するため、1刃あたり送り量を増加させます。

一方、広いラジアル切込み加工では、各切削刃が十分な切削量を確保できるため、大きな補正は必要ありません。

どちらの加工方法を選択すべきか

アダプティブ加工、トロコイド加工、高効率荒加工では、低ラジアル切込み加工が適しています。

一方、フルスロット加工や工作機械の能力によって高送り加工が制限される場合は、より広い切削幅を使用する加工方法が適しています。

チップシンニングに関するFAQ

Q:チップシンニングとは何ですか?

フライス工具が小さい接触角度で材料を切削する場合、実際の切りくず厚さが低下する現象をチップシンニングと呼びます。

Q:なぜチップシンニングは発生しますか?

各切削刃は円弧軌道を移動しますが、ラジアル接触範囲が小さい場合、設定された1刃あたり送り量に相当する切りくず厚さへ到達する前に切削が終了するためです。

Q:ラジアルチップシンニングとは何ですか?

ステップオーバー(ラジアル切込み量)が工具径に対して小さい場合に発生するチップシンニング現象を指します。

Q:チップシンニングはどのように計算しますか?

工具径とラジアル切込み量から補正係数を算出し、目標切りくず厚さに適用することで計算します。

Q:チップシンニング計算ツールとは何ですか?

工具径、ステップオーバー、切削負荷、RPM、刃数などを考慮し、補正後の1刃あたり送り量やテーブル送り速度を算出するツールです。

Q:チップシンニングは送り速度にどのような影響がありますか?

ラジアル切込み量が減少すると、必要な切りくず厚さを維持するため、一般的に1刃あたり送り量を増加させる必要があります。

Q:CAMソフトウェアはチップシンニングを自動計算できますか?

一部のCAMシステムでは、対応する加工パスや設定によって補正を自動適用できます。 ただし、加工者は工具接触状態や出力条件を必ず確認する必要があります。

Q:チップシンニングはいつ使用すべきですか?

工具径に対するラジアル切込み量が50%以下になる条件では、補正効果が大きくなります。 さらにステップオーバーが小さくなるほど、必要な補正量も増加します。

Q:チップシンニングは工具寿命を改善できますか?

はい。 適切な切りくず厚さを維持することで、摩擦低減、発熱抑制、切削刃寿命の向上につながります。

Q:スロット加工でチップシンニングを使用できますか?

いいえ。 フル幅スロット加工では工具接触量が大きいため、ラジアルチップシンニング補正は適用できません。

チップシンニングについてのまとめ

チップシンニングは、単純な送り速度の増加ではなく、切削条件を適切に制御するための送り補正技術です。

ラジアル切込み量を基準として補正値を計算し、その値を工作機械や工具の許容範囲と照らし合わせて確認することが重要です。

また、実際の加工では、切りくず形状、主軸負荷、加工面品質、工具摩耗状態などを確認しながら条件を最適化する必要があります。

適切にチップシンニングを活用することで、加工効率を向上させながら、加工精度や工具信頼性を維持した高品質なCNCフライス加工を実現できます。

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