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焼戻しとは?金属の焼戻し工程と用途

初出公開日 Oct 09, 2026, 更新日 Oct 09, 2026

1 min

目次
  • 焼戻しとは?
  • 鋼を焼戻しする理由
  • 焼戻しの工程と仕組み
  • 焼戻し温度は鋼の特性にどう影響する?
  • 焼戻しはCNC加工部品にどう影響する?
  • 焼戻しとほかの熱処理の比較
  • 焼戻しを施した鋼の主な用途
  • 焼戻しに関するよくある質問
  • 焼戻しのまとめ

要点

  • 一般的な焼入れ・焼戻し処理では、焼入れした鋼を下部臨界温度未満に再加熱して焼戻しを行います。
  • 焼戻し温度と保持時間は、最終的な機械的性質に影響します。
  • 焼戻しを施した鋼は、工具、歯車、軸、荷重を受ける部品などに使用されます。
  • CNC加工の工程設計では、熱処理による変形と最終的な寸法公差を考慮する必要があります。
  • 焼戻しは、焼入れ、焼なまし、焼ならしとは、目的と処理の順序が異なります。
工業炉での鋼部品の焼戻し

工業炉での鋼部品の焼戻し

焼入れによって鋼は高い硬さを得ますが、焼入れしたままの状態では、脆さと内部応力が残ることがあります。この状態を調整するのが焼戻しです。焼入れした鋼を下部臨界温度未満に再加熱し、所定の時間保持した後、管理された条件で冷却します。焼戻しは一般に、焼入れ直後の硬さと残留応力を低減し、靭性と延性を高めることで、鋼の特性を調整します。目標とする状態は、鋼種、焼戻し温度、保持時間、使用条件によって異なります。

焼戻しとは?

一般的な焼入れ・焼戻し処理における焼戻しは、焼入れした鋼に対して変態点未満で行う熱処理です。鋼を下部臨界温度未満に再加熱し、焼入れ後の状態を調整します。焼入れによる脆さと残留応力の一部を低減し、硬さ、強度、靭性、延性を用途に必要な範囲に整えます。一般には硬さと強度がある程度低下しますが、使用目的に適した特性のバランスが得られます。

鋼を焼戻しする理由

焼入れ後の脆さを低減する

焼入れでは、非常に硬いマルテンサイトが形成されます。一方、焼入れしたままの組織は、破壊靭性や耐衝撃性が十分でないことがあります。焼戻しは、耐摩耗性や使用条件に必要な硬さを確保しながら、組織を適切に変化させて脆さを低減します。

靭性と延性を向上させる

焼入れ部品には、表面の摩耗だけでなく、き裂や破損への抵抗も求められる場合があります。焼戻しでは、焼入れ直後の硬さを一部低減することで、延性と靭性を向上させます。これにより、衝撃、曲げ、繰り返し荷重を受ける部品に適した、硬さと靭性のバランスが得られます。

内部応力を緩和する

焼入れ時の急冷では、不均一な熱収縮や鋼内部の相変態によって残留応力が生じます。焼戻しは、その一部を緩和します。適切な時期に焼戻しを行うことで、焼割れや後の寸法変化につながる残留応力を低減できます。ただし、すでに生じたき裂を修復する処理ではありません。寸法安定性の改善が期待できる一方、加工と検査では熱処理による変形を引き続き考慮する必要があります。

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熱処理は、CNC部品の加工方法や仕上げ方法に影響します。特に厳しい寸法公差が求められる場合は、事前の検討が重要です。JLCCNCでは、製造前に部品を確認し、加工と熱処理に関する検討事項を洗い出します。

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焼戻しの工程と仕組み

焼入れから焼戻し後の冷却までの工程

焼入れから焼戻し後の冷却までの工程

焼戻し温度への加熱と保持

まず、焼入れした鋼を、下部臨界温度Ac1未満の所定温度に再加熱します。部品の断面全体が目標温度に達した後、必要な組織変化が進むよう、指定された時間保持します。この保持によって、部品の内部まで所定の焼戻し反応を進行させます。

焼戻し後の冷却

保持後は、鋼種と熱処理条件に応じて指定された方法で冷却します。一般的な鋼の焼戻しでは空冷を用いることが多いものの、焼戻し脆性を生じやすい合金鋼では、冷却方法も重要です。材料を再びオーステナイト域まで加熱することなく、この冷却によって熱処理の一連の工程を完了します。

鋼の組織に起こる変化

焼戻し中には、炭素を過飽和に含むマルテンサイトで炭素の再分配と炭化物の析出が進みます。反応の内容と生成する炭化物は、焼戻し温度、保持時間、合金組成によって異なります。鋼種と熱処理条件によっては、残留オーステナイトが焼戻し中に分解したり、その後の冷却時に変態したりします。高温での焼戻しでは、回復や炭化物の変化がさらに進みます。また、一部の合金鋼では、所定の組織と特性を得るために複数回の焼戻しが必要となります。

焼入れした鋼が出発点

これらの工程は、マルテンサイトを主体とし、残留オーステナイトや未溶解炭化物を含む場合がある、焼入れ後の状態を前提としています。焼戻しでは、この非平衡な組織に対して、管理された再加熱と保持を行います。その結果、焼戻しマルテンサイトが形成され、最終的な組織は熱処理条件と合金組成によって決まります。

焼戻し温度は鋼の特性にどう影響する?

注意点

適切な焼戻し温度は鋼種によって異なります。以下の温度範囲は一般的な例であり、すべての鋼に共通する設定値ではありません。

低温焼戻し

低温域での焼戻しでは、多くの鋼で150~250°C程度が一例となり、比較的高い硬さと引張強さを維持できます。脆さの低減は限定的です。一部の工具や耐摩耗部品など、高い硬さを残す必要がある用途で選ばれます。実際の温度は、対象の鋼種と目標とする機械的性質に応じて設定する必要があります。

中温焼戻し

中間の温度域では、軟化がより進む傾向があります。一般に硬さと強度が低下し、靭性と延性が向上しますが、その関係は鋼種によって異なり、特定の温度域では脆化にも注意が必要です。炭化物形成元素を含む合金鋼では、一定の温度域で二次硬化を示す場合があります。そのため、温度の選定には材料の化学組成も重要です。

高温焼戻し

一般的な焼入れ鋼では、500~650°C程度が高温焼戻しの一例です。この温度域では、回復と炭化物の変化がさらに進行します。通常は硬さと強度が低下する一方、靭性と延性が向上しますが、実際の変化は合金組成に大きく左右されます。したがって、鋼種、荷重条件、耐摩耗性、要求される機械的性質を踏まえて温度を選定します。すべての部品に同じ条件を適用することはできません。

焼戻しはCNC加工部品にどう影響する?

CNC加工する鋼部品の焼戻しを含む製造工程

CNC加工する鋼部品の焼戻しを含む製造工程

焼戻しは、焼入れ鋼の硬さ、残留応力、寸法安定性を変化させるため、加工工程の計画段階で熱処理条件を検討する必要があります。具体的な工程順序は、鋼種、部品形状、要求硬さ、最終的な寸法公差によって異なります。

加工順序と最終仕上げ

熱処理を行う鋼部品では、焼入れ・焼戻しの前に荒加工を行い、重要な面に熱処理後の仕上げ加工や研削に必要な加工代を残す場合があります。これにより、熱処理に伴う寸法変化を仕上げ工程で修正できます。プリハードン材や表面硬化処理では、異なる工程順序が必要になることがあります。

最終加工方法は、焼戻し後の硬さにも左右されます。高い硬さが残る部品には、焼入れ鋼に適した工具と切削条件が必要となり、特に厳しい精度が求められる面では研削が選ばれることもあります。

変形・寸法公差・最終検査

熱処理では、焼戻しによって残留応力を低減しても、寸法変化や形状のひずみが生じる場合があります。厳しいCNC加工の寸法公差に対応するには、熱処理前の加工寸法がそのまま維持されると考えず、予想される変化を工程計画に織り込む必要があります。

穴、取付面、データムに関係する面などの重要な形体は、最終の熱処理と仕上げ加工を終えた後に検査します。必要に応じて機能面に加工代を残し、熱処理後に除去することで、要求される形状と寸法公差を確保します。

焼戻しとほかの熱処理の比較

熱処理 主な目的 熱処理工程における位置づけ 代表的な加熱・冷却方法 鋼の特性への主な影響
焼戻し 靭性と延性の向上、焼入れによる残留応力の緩和を通じて、焼入れ鋼の特性を調整する。 焼入れ後に行う。 下部臨界温度未満に再加熱し、所定の時間保持した後、適切な速度で冷却する。 焼入れ直後の硬さを所定の水準に調整し、靭性、延性、残留応力の状態、寸法安定性を改善する。
焼入れ オーステナイト化した鋼を急冷し、硬化組織を形成する。 オーステナイト化温度域への加熱後、焼戻しの前に行う。 必要なオーステナイト化温度に加熱し、焼入れ媒体を用いて急冷する。 高い硬さと強度が得られる一方、残留応力や脆さが増す場合がある。
焼なまし 硬さを低下させ、被削性や成形性を改善し、より安定した組織を得る。 製造工程に応じて、機械加工、成形、後続の熱処理の前に行う。 完全焼なましでは、所定のオーステナイト化温度域まで加熱した後、炉内でゆっくり冷却する。 軟化して被削性が向上する。適した炭素鋼や合金鋼の完全焼なましでは、比較的粗いフェライト・パーライト組織が得られる。
焼ならし 鋼の組織と結晶粒を微細化・均一化する。 機械加工や後続の熱処理の前に、前処理または特性調整のために行う。 鋼を所定の変態点以上に加熱した後、空冷する。 均一で微細な組織が得られ、完全焼なましによる軟らかい状態とは異なる特性を示す。

焼戻しを施した鋼の主な用途

切削工具・金型・工具類

切削工具は、焼戻しの目的を理解しやすい代表例です。高速度工具鋼や冷間工具鋼は、ドリル、タップ、リーマ、フライス工具、パンチ、金型、せん断刃などの用途で、焼入れ・焼戻しを施して使用されます。耐摩耗性を確保するための硬さと、使用中の刃先の欠けや破損を抑えるための靭性の両方が求められます。

歯車・軸・機械部品

軸や車軸をはじめとする多くの機械部品では、断面全体で強度と靭性を両立するため、焼入れ・焼戻しを施した合金鋼が用いられます。一方、歯車では、耐摩耗性に優れた硬い表面と靭性の高い内部が必要な場合、浸炭後に焼入れ・焼戻しを行うなど、異なる熱処理工程が採用されます。

自動車部品・産業用部品

焼入れ・焼戻し鋼は、一部のコネクティングロッド、軸、工作機械部品、その他の構造部品など、繰り返し機械的荷重を受ける部品にも用いられます。必要な熱処理状態は、部品形状、荷重条件、耐摩耗性の要求、表面硬化と全体の焼入れのどちらが必要かによって異なります。こうした部品は、振動、繰り返し荷重、衝撃、摩耗を伴う接触にさらされます。焼戻しを施した鋼は、焼入れで得た硬さをある程度維持しながら、繰り返し荷重や衝撃への抵抗を確保したい用途に有効です。

焼戻しに関するよくある質問

焼戻しをすると鋼の硬さは低下しますか?

通常は低下します。多くの焼入れ鋼では、焼戻し温度が高くなるほど硬さと強度が低下し、靭性と延性が向上する傾向があります。ただし、一部の合金工具鋼は特定の温度域で二次硬化を示すため、硬さが単調に低下するとは限りません。

鋼を複数回焼戻しすることはありますか?

あります。一部の工具鋼や合金鋼では、要求される硬さと靭性を得るとともに、最初の焼戻し後の組織をさらに安定させるため、複数回の焼戻しを行います。ASMの熱処理に関する解説でも、複数回の焼戻しは確立された処理方法として扱われています。

焼戻しは必ず焼入れ後に行いますか?

一般的な焼入れ・焼戻し処理では、焼入れ後に行います。一方、ASMでは、焼ならし鋼に対する一部の変態点未満の熱処理や、溶接・成形・機械加工後の応力除去にも、広義のtemperingという用語を使用しています。ただし、日本語では応力除去焼なましなど、目的に応じて区別される処理もあり、通常のマルテンサイトの焼戻しと同一視すべきではありません。

アルミニウムにも鋼と同じ焼戻しを行いますか?

同じ処理ではありません。アルミニウムには、溶体化処理や時効処理などによる状態を表すT4、T6といった質別記号があります。英語でtemper designationと呼ばれるこれらの区分は、焼入れしたマルテンサイト鋼の焼戻しとは異なります。

鋼の焼戻しには、どのくらいの時間がかかりますか?

鋼種、断面の厚さ、焼戻し温度、要求される機械的性質によって異なります。部品の断面全体が所定の温度に達するまでの加熱時間と、その後に必要な焼戻し反応を進めるための保持時間を考慮して設定します。

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焼戻しのまとめ

焼戻しの目的は、最高の硬さをそのまま維持することではなく、焼入れ鋼を使用目的に適した状態に調整することです。CNC加工部品では、熱処理後の状態が仕上げ加工代や重要寸法の検査時期にも影響します。そのため、適切な焼戻し条件は、単独の熱処理工程としてではなく、製造工程全体の一部として検討する必要があります。

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